たかす雪まつりレーザーショウ2014

キト伝説

「雪の王国」

ナレーション原稿v3



<冒頭ナレーション>

昔、郡上郡は八幡町・大和町・白鳥町・美並村・明方村(みょうがたむら)・和良村(わらむら)・そして高鷲村の7つに分かれていました。昭和33年、福井県の石徹白村(いとしろむら)と白鳥町が合併、更に平成16年、7つの町村がすべて合併し、現在の郡上市が生まれました。このお話はその中のひとつ、ここ高鷲のお話です。



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オープニングVJ(約1分)

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>>>>>>>>>>>≪本編≫>>>>>>>>>>>>


1. 


今日も高鷲の村には雪がたーんと降って、子供たちは大はしゃぎ。元気いっぱい。寒さなんてへっちゃらじゃ。


おばぁはいつものように朝の支度をしていた。

漬物石をちょいとどけて、あー、腰が痛たた・・・

と、その時じゃった。

(三吉) 「おばぁ、おばぁ!村中が、えらい騒ぎじゃ。」

(おばぁ) 「どうした、三吉、大きな声で。」

(三吉) 「井戸の水を飲んだ人たちが倒れているんじゃ!はよ来てくれ!」

おばぁは慌てて三吉と一緒に村の様子を見に行った。おばぁは、ひと目見るなり、スーッと血の気が引いた。

倒れた人々の顔は赤く腫れ、ひどい熱にうなされておった。

(村人1) 「熱い〜!もうだめじゃ〜!」

(村人2) 「神様お助けくだせぇー!」


(おばぁ) 「三吉や、これは、もしかすると・・・」

おばぁは口を閉ざしたままだった。


その夜、おばぁは、三吉に話した。

(おばぁ) 「あれはな、「じゅがやたき」という悪霊の仕業じゃ。」

(三吉) 「じゅがやたき?」

(おばぁ) 「そうじゃ。そいつは普段は姿を見せないが、真っ黒で大っきな角が生えておってな、井戸の水の中に潜んで病を撒き散らす、めっぽう悪いやつじゃ。だが、1000年も前に、キト様がサヌザ岩に封印なされたはずじゃが。」

(三吉) 「キトが?」

(おばぁ) 「昔、高鷲には、「陀羅(だら)」という雪の王国があってな。この王国は1000年前、悪霊「じゅがやたき」に、あわや滅ぼされるところだったんじゃ。かろうじて助かった王国の民は、高鷲の山奥へ逃げ伸びたという。その「じゅがやたき」が、サヌザ岩の封印を解いて、今またやってきたのじゃ!」

(三吉) 「で、そいつを倒すには、どうすれば、ええんや?」

(おばぁ) 「この呪いを解くには、時間の扉を開いて王国へ行き、ある鳥を連れて来なければならぬ。それは「紫染の鳥(しせんのとり)」と言ってな、その鳥が飛んだ後に咲く花びらだけが、じゅがやたきの病を治すという言い伝えがあるんじゃ。後は、一体誰が王国に行くか・・・。」

(三吉) 「1000年・・・・」

三吉は、口をぽかーんと空けたままだった。




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レーザーショウ1

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2.


村の人々は日に日に弱っていった。食べ物も喉を通らず、熱は一向に下がらなかった。

三吉はキトに会うために、急いでサヌザ岩にやってきた。そして、ウヌラの耳と紅葵の芽を持って、叫んだ。

(三吉) 「キト・マドゥキリ・アヌーア・ゼハ!!」

すると凄まじい音と共に風が起こり、大きな大きな鷲が舞い降りた。高鷲の守り神、キト様の降臨じゃ。

(キト) 「少年よ、私を呼んだか。」

(三吉) 「うん、キト、村中が大変なんだ、助けてくれ!」

(キト) 「じゅがやたきのことは、知っている。」

(三吉) 「そ、それじゃぁ、キト、おらは、おらはどうすればいいんだ?」

(キト) 「そなたの祖母の「柚妃えま(ゆひえま)」がすでにこちらに向かっている。やがて「陀羅」への扉が開かれよう。」

(三吉) 「そ、それで?」

(キト) 「行くのだ!少年!1000年前の、雪の王国へ!」


程なくサヌザ岩に着いたおばぁは、無言のまま祈りの準備を始めた。

三吉は王国に行く決心も、つかないままだった。すると、耳元で誰かが三吉を呼んだ。

(エルマ) 「三吉君、三吉君。」

(三吉) 「だ、誰だ?」

(エルマ) 「私の名は、エルマ」

(三吉) 「エルマ、エルマじゃねぇか!びっくりしたー!で、何でここにいるんだ?」

(エルマ) 「キト様に呼ばれたの。一緒に王国へ行きましょう。」


おばぁは三吉とエルマに言った。

(おばぁ) 「わしが祈っておる間だけは、雪の王国への扉は開かれておる。だが、それは、3日間だけじゃ。よいか、3日間のうちに、紫染の鳥を連れてくるのじゃ。そして・・二人とも、必ず帰ってくるのじゃ。」

と言うと、おばぁは静かに祈り始めた。

夜が明けようとしたその時、三吉はサヌザ岩に突如浮かび上がる不思議な文字を見た。

エルマはその文字を呪文のように唱えた。


(エルマ) 「永遠の時は過ぎしたりとも、永遠の祈りはこの地に宿る」


すると大きな三角形の鳥居が現れ光り出した!

そして、二人はスッと消え、何と一瞬で1000年前の雪の王国にやってきた!


(三吉) 「お、おっかなびっくりしたー!」

(エルマ) 「三吉君、大丈夫?あの文字は、雪の王国へ入るための呪文なの。」

(三吉) 「こ、ここは!?」

(エルマ) 「雪の王国よ。」


王国では祝典の真っ最中だった。二人が現れたのは、そのど真ん中、しかも、国王の真正面だった。

周りは一斉にどよめき、兵士たちが二人を取り囲んだ。

(国王) 「皆のもの、静粛に!」

王様は、二人をじっとにらんで、玉座から降り立った。

(国王) 「天地の尊(あめつちのみこと)、ここに!」

(三吉) 「あめ、あめ・・・・なんだこいつぁ!!」

(エルマ) 「王様、お久しゅうございます」

(国王) 「精霊エルマよ。元気そうじゃな。して、その者は?」

(三吉) 「あめ、あめ、・・・あめこう!いや、今のなし。お、おめぇこそ何もんだ!」

(国王) 「我は陀羅国王、天地の尊。そなたは、もしや三吉少年ではないかな?。キト様からお聞きしたことがある。たいそう無鉄砲な少年とか。ホーッホッホ」

(三吉〜国王をさえぎるように)  「王様!「じゅがやたき」っていう悪霊が高鷲の村で暴れてるんだ。そいで、紫染の鳥っちゅうのを連れて帰らなきゃなんねぇんだ!」

(国王) 「ふむふむ。・・・・・・・何!?それは一大事である。早く言わぬか!クサビ、クサビはおるかー!」

(クサビ) 「はっ!王様」

(王様) 「クサビ、この者たちを、紫染山(しせんざん)へ案内せよ!」

(クサビ) 「御意!」


クサビは三吉たちを連れて、ある山へと向かった。それは歩いても歩いてもたどり着かないくらい遠い山だった。1日、2日と、ずーっと歩き通しだった。そして三吉はとうとう弱音を吐いた。

(三吉) 「おら、もうだめだー!もう歩けねぇ!」

(エルマ) 「三吉君、がんばって、みんなのために!」

(三吉) 「う、うん。」

三吉とエルマは、また歩き出した。


がんばれ!三吉!

高鷲のみんなが君を待っている!




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《地元出演者演奏》

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3.



その頃、サヌザ岩では、おばぁがひとり必死で祈り続けていた。

しかし、祈り続けてもう3日目、さすがのおばぁも力尽きかけていた。

するとそこへ、じゅがやたきの手下の「耳無狼(みみなしいぬ)」が、弱ってきたおばぁに突然襲いかかった!危ない!しかし、おばぁの強い祈りの力の前に、ひとたまりもなく消えてしまった。

おばぁはまた祈り始めた。あと少しで扉が閉じてしまう!三吉、エルマ、早く!早く!


すると、ついにそこへ真っ黒で、大っきな角を生やした悪霊「じゅがやたき」がやってきたのじゃ。もう今度こそ絶体絶命じゃ!

(じゅがやたき) 「ふふふ、柚妃えまよ、5つだけ待ってやろう。5,4,3,2,1,覚悟!」

(おばぁ) 「もはやここまでか!うーん、無念じゃ・・・」

おばぁは、無心剣を手に取った。

そこへ突然ゴーっという凄まじい音と共にキトが現れた。

(キト) 「祈りを止めてはならぬ、祈り続けるのだ!」

キトは悪霊のまわりをすさまじい速さで回り始めた。同時にピィーッと甲高い声を発した。すると悪霊はもがき苦しみ出した!

(じゅがやたき) 「ウォー!!1000年の恨み、キトー!」


次の瞬間、サヌザ岩の光る鳥居の中から、三吉とエルマ、そして、たくさんの紫染の鳥が帰ってきた!間に合ったのじゃ!


美しい紫染の鳥たちは、高鷲の村を覆うように飛んだ。

その後には、それはそれはたくさんの紫の桜が咲き、きれいな花びらが舞い踊った。

そして村人たちは、みるみるうちに元気を取り戻していった。村に笑顔が戻ったのじゃ。

じゅがやたきはキトによりサヌザ岩に再び封印され、やがて鳥たちは光の粒となっていった。

エルマも役目を終え、キトに一礼すると、フッと消えていった。



(三吉) 「おばぁ!こわかったよー!」三吉はおばぁの元に走り寄って泣きながら抱きついた。

(おばぁ) 「ようやったな、三吉や。それでこそ、わしの孫じゃ。」


 

明け方の高鷲はいつもより晴れ晴れとしていた。

キトは二人の姿を見届けると

大空へと舞い上がっていった。


めでたし、めでたし。




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レーザーショウ2

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