OVER RECORD Presents 高鷲村プレミアムレーザーショウ2003


キト伝説
〈大鷲と少年の物語〉

ナレーション原稿

1 LEGEND OF AN EAGLE

人の言い伝えとは時にあやふやなものですが、この話は真実を語っている数少ないお話です。
昔、高鷲にはキトと呼ばれる、大きな、しかしとても美しい鷲が住んでいました。初めはその大きな姿に、みな恐れをいだいていたのですが、川でおぼれかけた子供を救ったという噂が広まり、それからはみな、キトを、さほど恐れなくなりました。
しかも、その助けられたという少年がキトの羽を家に持ち帰ると、不思議なことがたくさん起こり始めました。
畑の作物はどの家よりも大きく育ち、おばあさんの病気もみるみるうちに良くなり、と、いいことばかりが起こるではありませんか。その話を聞いた村人たちはこぞってキトの羽を求め、山へ狩に出かけるようになってしまいました。


2 SNOW WALL

ところが、キトの羽を手に入れるため狩に行った者たちは、決まって熊に襲われたり、道に迷ったりと、ろくな目に会いませんでした。それどころか、キトはそれっきり人々の前に姿を現わさなくなってしまったのです。
ある年の冬、雪がいつもより激しく降り、村は閉ざされ、食べるものも底をつき、みんな日に日に弱っていきました。
少年はふと空を見上げていると、一羽の大きな鳥がこちらへ飛んで来るではありませんか!
キトです。キトは運んできたたくさんの木の実を家の庭に落とすと一瞬にして姿を消しました。
キトは山へ帰り、そしてまた村へ飛び別の家に食べ物を運んだのです。
と、その時、ドーン!と銃の音が村中に響き渡ったのです・・・


3 FOR KITHO

キトの羽が欲しい・・・たったそれだけのために、村人を助けようとした優しいキトは、撃たれてしまいました。雪の中、山から食べ物を運んでくれたキト。
少年はキトを救うため、持っていた羽を差し出し、代わりにキトを見逃してくれるよう一生懸命頼みました。
集まってきた村人たちにも説得され、その男はキトを傷つけたことを深く後悔しました。そしてみんなでキトの手当てをしました。
しかし、キトの目は閉じたまま、開きません。村人たちはみな深く悲しみました。
その夜、少年がキトのそばで寝ていると、どこからか見たこともないような子供たちが集まってきました。あちらからも、こちらからも、たくさんたくさんの子供たちが、キトを囲んで祈り始めました。少年はびっくりして飛び起き、その光景をただ唖然として見つめていました。
少年の優しい心が森の精霊たちを呼んだのです。キトは目を覚まし、再びその大きな羽を広げて飛び去っていきました。少年に1枚の羽を残して。

みなさんは自分の欲望のためだけに、自然や動物を犠牲にしないでください。キトもどこかでそう祈りながら、みなさんを見守っているのかもしれません。
人の言い伝えというのは時としてあやふやなものですが、これはただひとつ信用できるお話です。なぜなら、その少年とは、私のことなのですから。