【名田庄星のフィエスタ2003】  
レーザーショウストーリー原案2     2003-7-8 K

《星の旅人》


1.天音

それはまだ人々が心豊かだった時代の話。一人の若者が北へと向かう旅をしていました。彼の名は朝霧天音(あさぎあまね)。陰陽道の修行を始めて3年、聖地であり故郷でもある、名田庄へ帰ることを初めて許されたのです。はやく両親に会いたい。天音の心は躍るようでした。
昔の人々、特に霊力の発達した者達は陰陽師と呼ばれ、朝廷より厚い恩寵を受けていましたが、天音の先祖もそのうちの一人でした。俗に「闇」と呼ばれる邪悪な気の固まりを封じ、天皇と都を守ったといわれます。天音もまた、現代に生きる陰陽師としてこの国を守ろうという志を持っていました。
多くの陰陽道修行者たちが行き交うこの魔境の地で、彼は大きな人生の転機を迎えます。


2.啓示

そんなある夜のこと、天音が野宿をしていると、なにやら不吉な風が吹き始めました。そしてみるみる間に、大きな大きな闇が「シャシャシャー」と不気味な音をたてながら、天音を取り囲んでしまったのです。
「天音よ、お前ごときの力ではわれらを封印できまい。覚悟せよ!」
闇は天音の首を締め付け、身動きできぬよう押さえつけると呪文を唱え始めます。
月は姿を隠し、この世のものとは思えぬすさまじい嵐が吹き荒れました。
天音は金縛りにでもあったかのように息もできません。
すると、まばゆいばかりの光の筋が、雲の切れ間から差し込んできました。そしてその光の中から、なんと、人の姿が浮かび上がってきたではありませんか!

彼が呪文を唱え左手を一振りすると、あの凶暴な闇が一瞬で消えてしまいました。天音は震えながら「あなた様は・・・」と尋ねると、「安倍晴明と申す」と光の中の人は答えました。
「闇は、人々のけがれた心が作り出す悪魔。今やその力は、1000年前に私が張った光の結界を突き破るまでに巨大化してしまいました。こうしてはいられません。先のような闇が名田庄に向かっています。すぐにお行きなさい!」
それを聞くと、天音は一目散に駆け出しました。
名田庄では両親が天音の帰りを待っています。「お父さん、お母さん!どうかご無事でいてください!」



3.天命

名田庄にようやくたどり着いた天音の見たものは、見るも無残な光景でした。家々は焼かれ、人々は逃げ惑っています。
国は闇の堕落した心で埋め尽くされ、駆けつけた陰陽師たちの技という技は撥ねつけられ、どんな呪文も利きません。誰もがすべての終わりを悟ったのです。
そして、天音の両親もついに闇の餌食になってしまいました。天音は自分の力のなさを嘆きました。涙が枯れるほど泣きました。
しかし、天音はあきらめませんでした。この国を、名田庄を誰よりも愛していたからです。
天音は全霊力をこめて必死で祈りました。
「この国を清め奉れ!名田庄を救いたまえ!!」

すると、一筋の光が北極星の方角から伸びてきました。そこには安倍晴明の姿がありました。
「光を味方につけよ。そなた光の遣いとなれ!」彼は左手をかざし、中指に光の玉を作ると天音に差し出したのです。
「そなたの愛する名田庄を自ら救うがよい。そして両親のかたきを討ちなさい。」
天音は「晴明様、必ずこの村を守ってみせます。」と、その光の玉を受け取ると、胸にかざしました。するとおびただしい光が矢のように飛び出し、みるみるうちに闇は消えていきました。

晴明は光の中でこう言いました。
「何も恐れるな。若き陰陽師よ。そなたの名田庄を思う心、忘れるでない。もし私の力が必要ならば、その玉を北の空にかざすがよい。北極星が輝くとき私はここに再び舞い降りるであろう。」
朝霧天音は深くうなずきました。
「何をしておる。ほら、後ろをごらん。」
「え?・・・お、お父さん?お母さん!」
そこには死んだはずの天音の両親がにこやかに手を振っていました。


安倍晴明・・・彼は本当に北極星から来たのでしょうか。
いや、ここにいる名田庄のみなさんならば、もうご存知のはずでしょう。
星のふるさと、名田庄。安倍晴明の心と供に生き続ける、平和への祈りよ、永遠なれ。